研究開発

理論、シミュレーション、データ解析の連携による
現象の理解を求めて

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写真:浦野 諒  浦野 諒(うらの りょう)

 名古屋大学大学院工学研究科 特任助教
 連絡先:ryo.urano[@]chembio.nagoya-u.ac.jp
 


研究紹介

現在までの研究として主に、生体系を対象として古典系でのコンピュータシミュレーションを行い、その生体系の性質を調べたり、計算手法の改良を行ってきた。具体的には、まず膜タンパク質の構造予測の改良とバクテリオロドプシンへの適用を行い構造の再現と予測を行った。別の仕事として、その際用いたサンプリング強化法であるレプリカ交換法の方法論の改良を行った。さらに、両親媒性物質である逆ミセル系(マイクロエマルジョン)のシミュレーションを行い、そのサイズに関する研究を行った。また、アルツハイマー病の原因と言われるアミロイドベータとプリオンタンパク質との相互作用による凝集過程を実験の人と共同研究により解明した。現在は、薬剤がウイルスに対する影響を分子論的にシミュレーションを行って特徴づけることを目標として研究を行っている。そのために、これからも具体的な生体への応用例だけでなく、シミュレーション結果と連携できる理論手法の発展や、計算手法の開発やアルゴリズムの改良なども行っていきたいと思っている。これらのことは計算機が発展し、多くのデータを生み出すようになってきたためますます必要性が増してくると考えている。

図:RNA 含有HBVウイルスと薬剤分子エンテカビル RNA 含有HBVウイルスと薬剤分子エンテカビル(右下)

■研究分野
ウイルス、薬剤、分子シミュレーション

■研究課題
・自由エネルギー計算によるB型肝炎ウイルスへの薬剤の全原子分子動力学法による分子機構解明

■研究キーワード
ウイルス、薬剤機構、自由エネルギー計算、分子動力学法、統計物理

主要論文・活動実績
■主要論文
[1] Designed-walk replica-exchange method for simulations of complex systems. Computer Physics Communications, 196, 380-383, (2015),DOI: 10.1016/j.cpc.2015.07.007

[2] Observation of helix associations for insertion of a retinal molecule and distortions of helix structures in bacteriorhodopsin. The Journal of Chemical Physics 143, 235101 /10pages, (2015),DOI: 10.1063/1.4935964


[3] Cellular prion protein targets amyloid-β fibril ends via its C-terminal domain to prevent elongation, The Journal of Biological Chemistry, Journal of Biological Chemistry 41, 292, 16858-16871, (2017),DOI: 10.1074/jbc.M117.789990


■アウトリーチ活動
[1] ボストン日本人研究者交流会幹事 2016.3-2017.5
[2] 第50回生物物理夏の学校 幹事

自己紹介

■経歴
2015年3月 名古屋大学大学院理学研究科 物質理学専攻 博士(理学)
2015年4月-2017年5月 ボストン大学科学研究科 ポスドク
2017年6月~ 名古屋大学大学院工学研究科 ポスドク・特任助教

■所属学会
・生物物理学会
・分子シミュレーション研究会
・分子科学討論会

■研究者になって感じたこと
研究とはあまり関係ないかもしれないが、周りを見渡すに、学生、ポスドク、専任教員、教授と上の階級にいる人ほど、平均的にハードワークなきがする。日本でもアメリカでもポスドクが一番、朝早く夜遅いと思っていたんだけど。現実は、教授とかのほうがよほど忙しそうです。

■研究の魅力
理論に関するアイデアを思いついて、そのままではうまくいかないが、なんとか工夫してそれが実現できたときは、自分の成果が形として見えるので、非常に楽しい。

■研究で苦労したこと、うれしかったこと
博士後期課程の最終学年で、同時に4つの研究を行うこととなったが、(本当はもうすこしあったが)これは完全に自分の容量を超えていて正直かなりきつかった。これらの仕事が完了して、論文にアクセプトされたときは、結果として実ってかなり嬉しかった。それから、計算効率に関する仕事は自分で着想を得て始めたものであったので、特に嬉しさも大きかった。

■研究の意義、研究で大切なこと
問題意識をもって、研究を行わないと、日常のルーチンワークに内容が全部埋もれていく。他の研究を聞くときにも、自分の問題意識があるとなんか得られるものが多いと感じている。

■研究を成功させるカギ
問題意識や、目標を忘れずに継続すること、直接関係のないが多少の関連性のある分野にも興味関心を保つようにすること。

■休みの日は何をしていますか?
少し前から熱中しているのは、ドイツゲームとよばれるゲームの一種。ルームメイトと休みの日にちょくちょくやっていた。日本に帰ってきてからは、アプリで時々オンラインでやっている。

(2018/8/31記録)

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