研究開発

機械学習で薬の作り方を加速する

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写真:寺山 慧  寺山 慧(てらやま けい)

 1988年生まれ 東京都出身
 理化学研究所 革新知能統合研究センター 特別研究員
 理化学研究所 医科学イノベーションハブ推進プログラム 特別研究員(兼任)
 京都大学大学院 医学研究科 特定助教
 連絡先:kei.terayama[@]riken.jp
 個人ページ:https://sites.google.com/site/terayamaweb/


研究紹介

コンピュータを使って薬の候補を探したり新しい薬の候補を作成する際には、ポスト「京」など高速な計算機を使った様々な科学技術計算が不可欠です。例えば分子動力学計算(MD)や量子化学計算を行うことによって薬の候補化合物の良し悪しを評価することができます。ところが一般にこれらの計算は、ポスト「京」など強力な計算機を用いても非常に時間とコストがかかります。私はこの計算上のコストの問題に対し、様々な機械学習・最適化の手法を使って計算量を減らし、創薬研究全体を高速化する課題に取り組んでいます。例えば、薬候補化合物がターゲットとなるタンパク質にどのように結合しているか(結合ポーズ)予測する問題を機械学習(強化学習)の一種である多腕バンディット問題と捉え、自動的に重要ではない計算を省略し必要な計算に資源を優先的に割り当てることで、精度を保ちつつ計算全体を高速化する手法を開発しています[3]。さらに、Deep Learningなどの機械学習の手法を使ってこれまでにない薬の候補を生成する手法の開発などにも取り組んでいます[2][4] 。また、機械学習やコンピュータビジョンの手法を用いて、結晶構造予測など材料科学の研究[1]、魚の養殖支援技術の開発、サンゴの分布調査手法の開発、学習障害を持つ児童の支援手法の定量化など様々な課題に取り組んでいます。
※[1][2][3][4]は主要論文を参考




■研究分野
・情報科学
・機械学習

■研究課題
機械学習・最適化手法を用いた科学技術計算の効率・高速化

■研究キーワード
機械学習、最適化、強化学習、多腕バンディット、木探索、深層学習、分子動力学計算(MD)、第一原理計算、創薬、材料科学、コンピュータビジョン、群れ、水中生物、ソナー、発達障害

主要論文・活動実績
■主要論文
[1] K. Terayama, T. Yamashita, T. Oguchi, and K. Tsuda, "Fine-grained optimization method for crystal structure prediction," npj Computational Materials, Vol.4,No.32,2018,DOI: 10.1038/s41524-018-0090-y

[2] N. Yoshikawa, K. Terayama, T. Honma, K. Oono, K. Tsuda, ”Population-based de novo molecule generation, using grammatical evolution." arXiv preprint arXiv:1804.02134 (2018),arXiv:1804.02134


[3] K. Terayama, H. Iwata, M. Araki, Y. Okuno, and K. Tsuda, "Machine Learning Accelerates MD-based Binding-Pose Prediction between Ligands and Proteins," Bioinformatics, Vol.34, Issue 5, pp.770-778, 2018,DOI: 10.1093/bioinformatics/btx638


[4] X. Yang, J. Zhang, K. Yoshizoe, K. Terayama, and K. Tsuda, "ChemTS: An Efficient Python Library for de novo Molecular Generation", Science and Technology of Advanced Materials, Vol.18, No.1, pp.972-976, 2017,DOI: 10.1080/14686996.2017.1401424


[5] K. Terayama, H. Habe and M. Sakagami, “Multiple Fish Tracking with an NACA Airfoil Model for Collective Behavior Analysis,” IPSJ Transactions on Computer Vision and Applications, Vol.8, No.4, pp.1-7 (2016),DOI: 10.1186/10.1186/s41074-016-0004-1


[6] K. Terayama, H. Hioki and M. Sakagami, “A measurement method for speed distribution of collective motion with optical flow and its applications to school of fish,” International Journal of Semantic Computing, Vol.9, No.2, pp.143-168 (2015), DOI: 10.1109/ISM.2014.26


[7] K. Terayama, H. Tsuiki, “A Stream Calculus of Bottomed Sequences for Real Number Computation,” Electronic Notes in Theoretical Computer Science, Vol.298, pp.383-402(2013),DOI: 10.1016/j.entcs.2013.09.023



自己紹介

■経歴
2011年3月 京都大学総合人間学部認知情報学系卒業
2013年3月 京都大学大学院 人間・環境学研究科数理情報論分野修士課程修了
2016年3月 京都大学大学院 人間・環境学研究科数理情報論分野博士後期課程修了
2016年4月-2018年3月 東京大学大学院 新領域創成科学研究科津田研究室 特任研究員
2018年4月- 理化学研究所 革新知能統合研究センター 分子情報科学チーム 特別研究員
2018年4月- 京都大学大学院医学研究科ビッグデータ医科学分野 奥野研究室 特定助教
2018年6月- 理化学研究所 医科学イノベーションハブ推進プログラム 医薬プロセス最適化プラットフォーム推進グループ 特別研究員

■所属学会
・電子情報通信学会

■研究者になるまでの道のり
図:研究者になるまでの道のり

■研究者になって感じたこと
学生の頃は、 研究者は研究者コミュニティ(大学・研究所)の中で完結しているものというイメージがありましたが、 昨今の産官学連携の動きもあり、研究者以外の様々な方々とやり取りをすることが多くなってきました。 単純に研究をして論文を書く(申請書と報告書を書く)だけではなく、異なる立場の人々と適切にコミュニケーションをとって全体の目標を達成する能力が求められているなと感じます。 また、研究を遂行するためには健康を維持する必要があり、単純に体力と精神力が必要だなと最近つくづく感じるようになってきました。研究をしているとどうしても部屋の中で1日中パソコンの前に座ることが多くなり、何もしないと体力は落ちる一方です。今年から不摂生を反省して、休日にはジムに行くなどして体力作りに励んでいます。

■研究の魅力と楽しみ
他の業種の経験がないので確かなことは言えませんが、おそらく他の業種に比べて自由度が大きい点が魅力だと思います。研究室や分野などによりますが、学生や研究員でも研究テーマをある程度自分で選択して自分のやり方で研究を進めることが可能だと思います。もちろん、各々の分野の流儀を身につけねばならず、うまく進まない場合の責任は自分で取る必要がありますが、自ら研究上の目標を設定して自由にアプローチできる点は研究の大きな魅力であり楽しみでもあると思います。


■趣味
読書、お菓子づくり、落語鑑賞などが趣味なのですが、最近は忙しくてなかなか時間が取れないのが残念です。

イメージ図:寺山さん趣味

(2018/8/31記録)

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