研究開発

シミュレーションでタンパク質の仕組みをよく理解し、
薬効の高い薬を設計しよう

(印刷用PDF:609KB)
写真:田口 真彦  田口 真彦(たぐち まさひこ)

 1987年生まれ、群馬県出身
 京都大学大学院理学研究科 特定研究員
 連絡先:taguchi.masahiko.8e[@]kyoto-u.ac.jp
 所属研究室ページ:http://kuchem.kyoto-u.ac.jp/riron/


研究紹介

学生時代は主に物理の理論研究をしていました。博士研究員に着任してからは、いままで培ってきた物理の知識や考え方をバックグラウンドとして持ち、光受容タンパク質やHIVプロテアーゼ阻害剤に関する分子シミュレーションに取り組んでいます。光受容タンパク質の研究では実験で示唆されていた光活性化後の準安定状態のモデルを得ることに成功しました(下図)。HIVプロテアーゼの研究では基質の中間状態を調べることにより、反応阻害剤設計に関する有用な知見を得ています。これからやってみたい研究は変異体を調べることです。光受容タンパク質は光遺伝学で有用なツールとされており、今回の天然タンパク質で得られた知見をもとに、変異を入れることにより人工的にエンジニアリングされたタンパク質の設計を目指します。またHIVプロテアーゼの方は、変異が入ることにより、基質分子の反応は進むにも関わらず、従来の薬剤が効かなくなることが知られており、この仕組みをよく理解し、変異が入っても薬効が落ちないような薬剤の設計に挑戦したいと思っています。

図:水溶性光受容体タンパク質の研究結果  


■研究分野
・生物物理学
・計算創薬
・分子科学

■研究課題
・半導体及び超伝導体ナノ構造における量子位相が関わる現象の理論研究(2013年4月〜2016年3月 博士課程)
・水溶性光受容タンパク質の光活性化機構に関する分子シミュレーション(2016年4月〜)
・HIVプロテアーゼの基質及び反応阻害剤に関する分子シミュレーション(2017年4月〜)

■研究キーワード
タンパク質、反応阻害剤、光異性化、分子シミュレーション、量子化学計算

主要論文・活動実績
■最近の主要論文
[1] M. Taguchi, D. M. Basko, and F. W .J. Hekking,"Mode engineering with a one-dimensional superconducting metamaterial",Phys. Rev. B 92, 024507 (2015),DOI: 10.1103/PhysRevB.92.024507

[2] S. Nakajima, M. Taguchi, T. Kubo, and Y. Tokura,"Interaction effect on adiabatic pump of charge and spin in quantum dot",Phys. Rev. B 92, 195420 (2015),DOI: 10.1103/PhysRevB.92.195420


[3] M. Taguchi, S. Nakajima, T. Kubo, and Y. Tokura,"Quantum Adiabatic Pumping by Modulating Tunnel Phase in Quantum Dots", J. Phys. Soc. Jpn. 85, 084704 (2016),DOI: 10.7566/JPSJ.85.084704


[4] A. E. Svetogorov, M. Taguchi, Y. Tokura, D. M. Basko, and F. W. J. Hekking,"Theory of coherent quantum phase-slips in Josephson junction chains with periodic spatial modulations", Phys. Rev. B 97, 104514 (2018),DOI: 10.1103/PhysRevB.97.104514


■アウトリーチ活動
京都大学ELCAS(最先端科学の体験型学習講座)基盤コース後期 化学 (2016年11月5日)

自己紹介

■経歴
2010年3月 筑波大学第一学群自然学類卒業
2016年3月 筑波大学大学院数理物質科学研究科博士後期課程終了、博士(理学)
2016年4月〜京都大学大学院理学研究科 特定研究員

■所属学会
・生物物理学会
・分子科学会

■研究者になるまでの道のり(きっかけ)
 学部生の頃までは高校の先生になりたいと思っていました。しかし、友達と専門書を輪読したり、時間を忘れて議論しているうちに、研究にはまってしまいました。また、色々な大人と接する中で研究者は面白い人が多かったのも惹かれた理由です。

■研究者になってみて感じたこと
 研究というと昔は何だか頭の良い人がバーっとやるようなイメージだったのですが、実際には毎日コツコツと、ときには気合で頑張る感じで、そうこう試行錯誤しているうちに研究対象に思い入れが出てきます。

■研究の魅力
 いままで誰も知らないことを知ることができ、その時代の新しい技術と相まって新しい側面を見ることができるワクワクする活動と思います。

■研究で苦労したこと、うれしかったこと
 最初化学や生物の知識がなく苦労したのですが、研究を進めるのに必要になると不思議と楽しく学べました。良く練られた面白い課題を与えてくださった林先生にはとても感謝しております。

■研究の意義、研究で大切なこと
 良い研究をするために、お互い飾らず、まずは自分をさらけ出すことが大切だと感じています。また、知らないことはどんどん質問する、質問すると議論のきっかけになり、アイデアが出てくることがあると思います。

■研究を成功させるカギ
 問題が起きたときに、問題箇所を切り分けるために、目の前のデータと素直に正面から向き合うことの重要性を学びました。また、とりあえず手を動かしてみることが大切なときがあり、最初難しく見えても正のフィードバックが掛かって意外と進むことがあります。

■研究以外に興味のあること(趣味など)
 音楽、旅行、映画、山登り、美味しいもの巡り

イメージ図:田口さんの趣味

(2018/8/31記録)

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