ポスト「京」重点課題1×重点課題2連携シンポジウム
ポスト「京」」(スーパーコンピュータ「富岳」)重点課題プロジェクトは、2019年度に最終年度を迎えました。そこで重点課題1では、同じく健康長寿社会の実現をターゲットとした研究開発を担うポスト「京」重点課題2「個別化・予防医療を支援する統合計算生命科学」と連携し、シンポジウムを開催いたします。「京」の成果をふまえて、2021年の本格稼働に向けてポスト「京」がもたらす個別化医療、創薬基盤の構築など生命科学研究の最前線とその展望などについてご紹介します。
「 個別化医療・創薬基盤に衝撃 ―スパコン「富岳」が起こす地殻変動― 」
開催要項
【日 時】2019年8月8日(木)10:00~16:40(受付開始 9:30)
【場 所】秋葉原UDXギャラリーネクスト NEXT-1(4F)、〒101-0021
東京都千代田区外神田4-14-1 マップ
【参加費】無料
【定 員】約180名
参加登録
参加申込人数が定員に達しましたので、受付を終了しました。
たくさんのお申込みありがとうございました。
プログラム
10:00- 開会挨拶
重点課題1課題代表者 奥野恭史/重点課題2課題代表者 宮野 悟
セッションⅠ 重点課題1
10:05-10:15
生体分子システムの機能制御による革新的創薬基盤の構築 全体報告
重点課題1課題代表者 奥野恭史
10:15-10:45
創薬を加速する超並列分子動力学シミュレータGENESISの開発
理化学研究所 生命機能科学研究センター 杉田有治
「富岳」は「京」と比較して35倍以上の計算能力の向上が見込まれていますが、その性能を発揮するために、我々はGENESISという分子動力学ソフトウェアを開発してきました。「富岳」とGENESISの開発者が相談しながら改良した新しいバージョンでは、「京」と比較して125倍以上の計算を実現できる見込みです。「富岳」を用いることで、これまで不可能であった2つの研究を実現します。一つは、蛋白質が働く現場である細胞環境の影響を取り込んだ超大規模分子動力学シミュレーションです。「京」を用いてバクテリア細胞質の全原子分子動力学を行いましたが、これからはDNAやRNA、それらの複合体や凝集体の計算も可能になります。もう一つは、蛋白質・低分子あるいは蛋白質・蛋白質の相互作用予測です。このために開発された複数の分子動力学を同時に行う計算手法はCPU coreを多く含む「富岳」に最も適しています。GENESISを用いることで基礎生物科学の理解と予測、創薬応用に繋がる研究を加速します。
10:45-11:15
「富岳」による次世代創薬計算技術にむけて
横浜市立大学 生命医科学研究科 池口満徳
本発表では、重点課題1のうち、サブ課題Bの成果を発表します。サブ課題Bは、サブ課題Aとサブ課題Cの間に位置し、サブ課題Aで開発している「富岳」に高度に最適化されたソフトウエアやアルゴリズムを活用し、サブ課題Cで展開している創薬への応用に向けた技術開発を行うことを主なミッションとしています。特に、「富岳」のようなフラッグシップマシンでは、通常のマシンでは実行が難しい大規模な計算によるブレークスルーが期待されます。創薬に資する分子シミュレーション研究の場合、時間方向の大規模化と、サイズ方向の大規模化が重要です。長時間シミュレーションによる標的タンパク質の立体構造ダイナミクスや、ウイルスキャプシドやヌクレオソームなどの大規模シミュレーションの成果を紹介します。さらには、先端計測などの実験との連携も重要であり、そのような研究成果についても紹介しようと考えています。
11:15-11:45
スーパーコンピュータ「富岳」で目指すビッグデータ創薬
理化学研究所 生命機能科学研究センター/京都大学大学院医学研究科 奥野恭史
医薬品の開発は、10年以上の長い年月と、1000億円以上の巨額の費用がかかると言われています。開発費用が高くなるということは、私たちが手にする薬の値段も高くなり、そのために、一部が税金でカバーされている医療費も高くなってしまいます。このことから、医薬品開発の効率化をはかり、開発コストを下げることは、製薬業界のみならず、日本の医療費問題にとっても重要な課題となっています。私たちは、これまでにスーパーコンピュータ「京」を用いて、より速く、より正確に、医薬品を予測することによって、より安く医薬品を開発できるソフトウェアを開発してきました。本講演では、私たちが「京」を用いて行ってきた研究成果と2021年始動の「富岳」によるスパコン創薬の展望についてお話します。
昼休憩(65分)
ポスターセッション 重点課題1
12:50-13:30 重点課題1参加研究者によるポスター発表
セッションⅡ 重点課題2
13:30-13:40
個別化・予防医療を支援する統合計算生命科学 全体報告
重点課題2課題代表者 宮野悟
13:40-14:10
大量シーケンスBEYOND
東京大学医科学研究所 宮野悟
がんは生命のプログラムであるゲノムに変異が入ってシステム異常を起こした極めて複雑な細胞集団で変幻進化します。その結果、現在、次世代シークエンサーの進歩により、数百ドルで個々人のがんの全ゲノムシークエンス情報を得ることができるようになりその複雑さが浮上してきました。同時に、スーパーコンピュータの発展がなければそのデータ解析は実現しないものでした。今や、がんの医療や研究はデータとの格闘技であり、ビッグデータを扱うスパコンや人工知能が未来を決します。そして、がんの理解や医療は、もはや生物学・医学の領域から昇華し、新しい次元へのオデッセイが始まったといっても過言ではありません。本講演では、ゲノムデータ解析パイプライン Genomon とヒトゲノム解析センタースパコン SHIROKANE や「京」を用いて暴き出してきたがんのシステム異常の一端に関する世界トップのがんゲノム研究の成果を紹介しながら、スパコン「富岳」が、がんゲノム研究に起こす地殻変動を予測します。
14:10-14:40
個別化医療を支援する全脳循環シミュレータの開発
大阪大学大学院基礎工学研究科 和田成生
脳循環は、神経活動に必要な酸素や栄養を脳組織に供給するために重要な役割を果たしています。しかし、脳の全ての血管に血液が滞りなく送り込まれる仕組みや、脳血流量を制御するメカニズム、脳血管障害が生じた時の応答など、未だ明らかにされていないことがたくさんあります。これらの問題には、個人ごとに異なる脳血管系の構造や形態が関与していると考えられています。 そこで、我々は医用画像計測と数理モデルを組み合わせることにより、リアリティの高い個別の全脳レベルの血管モデルを構築し、スーパーコンピ ュータ「京」や「富岳」を用いて脳血流解析を行うためのシミュレータの開発を行ってきました。本講演ではこれまでの研究成果と全脳循環シミュレータの今後の展開についてご紹介します。
休憩(10分)
ポスターセッション 重点課題2
14:50-15:30 重点課題2参加研究者によるポスター発表
セッション コラボ研究 重点課題1×重点課題2
15:30-16:30
心臓シミュレーションと分子シミュレーションの融合 - 新たな時代の幕開け -
㈱UT-Heart研究所 久田俊明、鷲尾巧、岡田純一、理化学研究所 金田亮、東京大学 寺田透
タンパク機能の変化が最終的に臓器レベルにどのような影響をもたらすかを物理的に解明・予測することができれば、その用途は無限に広がります。私達は、次年度から稼働する「富岳」のパワーを活かし、世界で初めて心臓シミュレーションと分子シミュレーションを融合させた真のマルチスケールシミュレ ーションを実現することに挑戦したいと考えています。これにより計算科学の歴史に新たなマイルストーンを築くと共に、肥大型心筋症など収縮タンパクを構成するアミノ酸の変異に関わる心臓病の解明や治療、そして創薬における候補化合物の心臓への副作用(催不整脈作用)の効率的リスク予測の実現を目指します。そのためには、これまでほぼ独立な学問として発展して来た連続体のシミュレーションと分子シミュレーションの専門家が相互理解を深め協力することが不可欠です。本サブ課題は下図のような体制で重点課題 1 と2 の協同により推進されています。
エンディング
16:30-16:40 総評、閉会挨拶
重点課題1課題代表者 奥野恭史/重点課題2課題代表者 宮野悟
共催・後援
【共催】 ポスト「京」重点課題1 生体分子システムの機能制御による革新的創薬基盤の構築
ポスト「京」重点課題2 個別化・予防医療を支援する統合計算生命科学
【後援】 理化学研究所科技ハブ産連本部医科学イノベーションハブ推進プログラム
理化学研究所健康生き活き羅針盤リサーチコンプレックス推進プログラム
【協賛】 「システム癌新次元」文部科学省科学研究費補助金 新学術領域研究(複合領域4701) がんシステムの新次 元俯瞰と攻略
お問合せ先
東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター DNA情報解析分野
ポスト「京」重点課題2 事務局
E-mail:icls-office[at]hgc.jp TEL: 03-5449-5615